Cerevoの電気エンジニアが第一級陸上無線技術士試験の学習から受験までの道のり。おさえておきたいポイント


はじめに

こんにちは。電気エンジニアの早川です。

IoTハードウェアを中心に企画・開発・販売するCerevoでは自社製品のほかに受託案件も現在受け付けており2020年の後半、無線を扱う案件に携わることがありました。既存規格がどれも目的にあわず、独自方式での無線通信を開発することになりましたが、無線の専門家ではないため知識に自信がなく、勉強しながら進めた案件となりました。

それがきっかけとなり無線に興味を持ち「第一級陸上無線技術士試験」受験に至りました。

第一級陸上無線技術士試験って、どんな資格?

日本無線協会のWebサイトから引用しますと

放送局、電気通信業務用等の固定局、無線測位局等すべての無線局の無線設備の技術的な操作を行うことができます。

https://www.nichimu.or.jp/denpa/shikaku/riku/index.html

とあります。無線資格の最高峰とも言われますが、Cerevoの自社製品郡開発ではあまり出番がないものでもあります。

資格と目的

どんな資格をどんな目的で取得するか人それぞれでしょう。
ざっとこんなところが考えられるでしょうか。

  • 業務で必要
  • 個人の活動のために必要
  • 称号として
  • 転職活動のため
  • 趣味
  • 学習のため

私の場合、技術系の資格を取る目的を学習のためと位置づけています。それと、趣味の一面もあります。何か目標を設定してクリアを目指すことはゲームのような楽しさがあります。仕事で使わないような資格取ってどうするの?と聞かれたら趣味です!と自信を持って答えるでしょう。

開発のお仕事と工学の基礎

無線技術士の試験には”無線工学の基礎”という科目がありますが、それ以外の科目でも全般的に工学の基礎知識が問われる内容となっています。私が他に持っている資格である第三種電気主任技術者についても同様です。

この工学の基礎をどれだけ学習するかが、エンジニアとしての柔軟性に現れてくると考えています。エンジニアの仕事は専門的ですが、それは基礎の上に成り立った専門性です。エンジニアとして仕事ができている以上、今やっている事の基礎は少なくとも身についている状態であると考えられるのではないでしょうか。

しかし、工学の基礎という広いくくりで見ると、これが完璧ですと言える人は少数ではないでしょうか。そういう意味でも今、仕事として行っている範囲から、裾野を広げて基礎を学習するのに資格の取得というのはうってつけというわけです。

基礎の裾野が広がると、自分の専門分野から少し離れた知識が必要となる場面に出くわしても、新たに学習するためのフットワークが軽くなります。 また、一見別々の専門分野でも基礎の部分で密接に関係していることも多く、点と点が線でつながりさらなる理解につながります。そういった機会をもっとも簡単に設定できるのが資格試験の受験と言えるのではないでしょうか。

第一級陸上無線技術士試験の学習について

以下の4科目があります。科目毎に合否が判定され、合格となった科目は3年間試験が免除されます。このため、一度に全科目合格する必要はありません。

  • 無線工学の基礎
  • 法規
  • 無線工学A
  • 無線工学B

今回の計画

一回目の受験で「無線工学の基礎」、「無線工学A」を取り、二回目で残りのすべてを取る計画です。

学習期間

業務が忙しかったこともあり、手を付けるのがかなり遅くなってしまいました。結果的に、1科目2週間程度の学習期間となりました。一日の学習時間ですが、平日は3時間程度、休日は帰省時を除いて8時間程度だったと記憶しています。自分のツイートやスマホの写真を見返すと、だいたい次のような日程で進めていたようです。

無線工学の基礎

2020/12/20~2021/1/5

無線工学A

2021/1/6~2021/1/15

直前対策(苦手問題の振り返り)

2021/1/16~2021/1/17

試験当日

2021/1/18~2021/1/19

個人的に感じた難易度

無線工学の基礎

概ね高専で習った内容で、その復習といった感じでした。つまり、高専卒業程度の難易度と言えます。電気回路分野では、(田)型の回路のような少しトリッキーな問題が出るので多少の慣れが必要です。電気物理分野は、いきなり資格の参考書から入るより電磁気学の教科書を一旦復習してからの方がいろいろな公式同士の結びつきも理解できるので良いかもしれません。

無線工学A

より掘り下げた専門分野からの出題です。電気エンジニアの仕事をやっていると普段から使っている知識で解ける問題も多く、あまり勉強が苦にはなりませんでした。地デジやWiMAXといった比較的新しい技術に関する問題も出るのである意味、親しみやすいです。真面目に導出しようと思うと式が非常に長くなるような問題も出るので、慣れが必要な部分もあります。もっとも、似たような問題が過去問に何度も登場するので解いているうちに結果を覚えてしまったりもします。

無線工学の基礎と比べて傾向が違うと思う部分として、結果が整数にならない問題が多いです。普段あまり縁のない10の平方根を使う必要があったり、log←→真数の変換でややトリッキーな計算を求められる問題が出ます。その他、2^10≒10^3のような近似を使うとすぐに解ける問題など、数値計算にパズル性を持たせている点が特徴的と言えます。

Twitterでの意見

無線工学Bと法規の2科目については今回はまだ手を付けていないのでなんとも言えませんが、個人的に「無線工学B」が一番難しいような気がしていますが、Twitterでアンケートを取ってみたところ以下のような結果となりました。

学習の戦略

無線工学の基礎

一通り参考書を読んで出題範囲の知識を復習しました。次に過去問を7年分(=14回分)ほど解きました。過去問を解いて、躓いたところを再度復習といった要領で進めました。不正解だった部分には問題集に付箋を貼り、苦手問題をすぐに振り返ることができるようにしました。

使用した参考書

無線工学A

手を付けたときすでに残り日数が2週間程度となっていたため、参考書を斜め読みして重要と思う部分を学習しました。いきなり過去問を解いてもある程度解けるなという感触があったため、後半はひたすら過去問を解いていた記憶です。

使用した参考書

第一級陸上無線技術士試験に挑戦

ここからは受験の体験記を綴っていきます。当日は落ち着いて会場に向かいたいですし、直前対策も落ち着いてやりたいので会場近くにホテルを取りました。

受験前夜

ホテル最寄り駅

誰もいませんね。たまらない非日常感です。

ホテル到着!

一度はコミケのときに泊まってみたいあのホテル!ご時世もあってお安く泊まることができました。

絶景じゃないですか!テンション上がりますね!!!

いいですね~~~~

試験1日目

朝食!

なかなかのボリューム。やる気スイッチ入りますね!

無線工学の基礎受験

そこそこ手応えがあり、行けたなと思いました。

法規受験

ノー勉なのでまるでダメです。完全に記念受験です。

試験2日目

朝食!

この日は鮭でした。

無線工学A受験

やはり勉強不足が祟って何問か解けない問題がありましたが、自信を持てる回答数を数えてみたら一応合格点には達しているな、という感触でした。

無線工学B受験

宇宙空間と猫、終始あのインターネット・ミームのような脳内でした。

打ち上げ!

なんと会場近くにキリンシティがあるではないですか!ビール好きの私としてはたまりませんね!最高です!!!!

受験結果

試験後数日経つと無線協会のWebサイトで解答が公開されます。これを見ながら自己採点を行うことができます。

無線工学の基礎

123
満点:125 合格点:75

1問だけ苦手のままにしてしまった問題が出て、そこで2点落としてしまいました。悔しい結果です。でも合格ではあります。

無線工学A

114
満点:125 合格点:75

やはり勉強不足を感じました。一応合格ではありますが、付け焼き刃だった感は否めないですね。

その他

辛くなるので採点しません!

学習と受験においておさえておきたいポイント

わからない問題を解くための3テクニック

本番で全くノーマークだった問題が出題されたとき、諦めるのは早いです。試験時間は2時間30分もあるので、そういった問題は後回しにしつつ最後の抵抗をする十分な時間があります。

1. 物理量同士の比例・反比例に着目する

問題文で与えられた物理量の単位に着目したり、○○密度、のようないかにも体積に関係しそうな名称、そういったところから比例・反比例を類推して立式していくと正解にたどり着く場合があります。

2. とりあえず冷静に読んでみる

国語のテストなんじゃないかと思えるほど当たり前のことが書いてあるだけの問題もあります。

3. 書いてあるとおりに計算してみる

導出手順を説明する穴埋め問題の場合、問題文に書いてあるとおりに計算するだけで正解にたどり着く場合があります。

効率よく取るか、学習効果を高めるかを定める

楽して取るには

冒頭でも書いたように資格を取る目的は人それぞれです。楽して効率よく取りたい場合もあると思います。陸上無線技術士の試験は過去問からの出題が多く、過去問研究をいかにやるかが秘訣になってきます。本当に数値を変えただけのような問題が何度も出るので、ひたすら過去問をこなせば中身を理解できていなくても解き方だけは体が覚えてくると思います。

学習のために取るには

逆に学習効果を狙って受験する場合も基本的には過去問を解いていく要領ですが、これは出題範囲の確認のためであり、躓いたところを入念に復習して苦手分野を潰していくと良いと思います。

合格のためには試験対策は必要

学習のためといっても、最終的には合格しなければなりませんから、この2つの中間があっても良いと考えています。試験の合格のためには、ある程度試験のための勉強というアプローチも必要でしょう。

今回の受験で得られたもの

タイトルが「学習から受験まで」とあるようにまだ資格の取得には至っておらず、いつか続編または完結編が書けるよう頑張っていきたいと思います。

社会人になってから初めて毎日何時間か勉強をするという体験をしました。うまく言い表せませんが、すっかり忘れていた「勉強のやり方」みたいなものを思い出させてくれたと思います。

無線工学の基礎については学生の頃習ったはずなのにきちんと理解していなかった部分などに気づくことができ、それを復習することができました。この科目の出題範囲は様々な分野と共通するものですので、今後の仕事にも生きてきそうです。

今後の計画

7月に例年通り試験があれば、そこで残りの2科目を取り資格の取得に至るよう進めていく予定です。

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