基板設計アートワークの楽しみ方。Tシャツ制作の場合


こんにちは。電気エンジニアのちはです。
電気エンジニアの仕事の1つに、プロダクトの基板設計があります。
この設計して完成したものを「アートワーク(AW)」と呼びます。

そうしたAWは製品が量産段階に入ってしまえば、それ以降、基本触ることはありません。何ロットかを経て改良することもありますが、それも稀なことです。

Cerevoでは、これまでにもWebサイトや販促物のデザインにAWを活用していますが、今回は弊社の主力製品のひとつである汎用タリーランプ・システム「FlexTally」のAWの楽しみ方を紹介したいと思います。

AWをもっと楽しむ!Tシャツ制作

趣味の工作に使える材料はないかとAliExpressを彷徨っていたところ、とある基板を撮影したフルグラフィックTシャツが売れているのを目にしました。
日本人なら聞いたことが一度はあるであろう、あのゲーム機の商品名が見えます。隠してしていません。懐かしいなあと思う一方、潔さに謎の中華らしさを感じます。

それならば折角なのでCerevo製品のAWでもやってみたらいいのではと、Tシャツ制作に挑戦することにしました。

Tシャツデザインに使うAWの準備

今回デザインに用いたのはCerevoの汎用タリーランプ・システム「FlexTally」のランプユニットに内蔵されているメイン基板です。
基板設計に使用したCADソフト Altium Designer ではこのように見えます。

このAWデータをAdobe Illustratorで加工し、テンプレートにデザインして入稿します。今回は株式会社デジタさんのTシャツ製造サービスを利用させていただきました。

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Altiumから書き出せる形式の中でIllustratorが読める形式はDXFかDWGですので、DXFで書き出してIllustratorで読み込みます。
出力したデータを調整して以下の4パターンまで絞り、今回は下段のカラフルな2つをTシャツに印刷しました。
配色はCerevoカラーをベースに、配線の複雑さを賑やかに見せるため、基板の層ごとにトライアドで配色しました。

これをTシャツ用テンプレートに配置して入稿します。
データチェックをパスすると工場で製造され、2週間ほどで手元に到着します。

できました!
細いラインまで綺麗に、色も鮮やかに印刷されています。
シャツの風合いと合わさって感動の仕上がりです笑

余談ですが、個人的にはUnited AthleのヘビーウェイトTシャツが好きなので選べるときはコレを選びます。United Athleの5.6オンスTシャツは「ヘビーウェイト」とありますが、パーカーのような厚ぼったさはなく、かといって薄すぎず、何度洗濯してもヘタりにくいため非常に使い勝手がよいのです。

今回デザインに使ったAWは電気回路の設計図です。 一見、ごちゃっとしてて何だか良く分からない模様に見えますが、よく観察すると規則性や設計者の意図が見えてくる面白さがあります。

FlexTallyのAWについて

FlexTallyのランプユニットは、パッケージに同梱されているステーション(タリー信号送信ユニット)の信号を受信するメイン基板と、ランプ用のLEDを実装した小さい基板の2つで構成されています。

今回はその2つのうち、タリー信号を受信するメイン基板のAWをデザインに使用しました。デザインの中では、細くカラフルな線が配線、塗りの丸や四角がパーツのフットプリント、丸穴がネジ穴です。

何箇所かクローズアップします。

  • MCU
    ランプユニット全体をコントロールしているICです。
  • アンテナ部分
    ステーション側と通信するためのアンテナです。
    基板上にプリントするアンテナは「パターンアンテナ」と呼ばれます。
  • USB
    本体外部から見えるUSB端子の部分です。
    FlexTallyではUSBの電源を利用して内蔵電池を充電しています。
  • 押ボタンスイッチ
    丸で囲んだ2箇所が本体上部にある押しボタン用のタクタイルスイッチです。カチカチといった手触りはこの電子部品によるものです。
  • フルカラーLED
    ランプユニット上部に見えるインジケータ用のLEDです。
  • 基板の穴
    四隅にあるやや大きい穴は基板を筐体に固定するためのものです。
    また、中央の大きい丸穴はLED基板へのハーネスを通すための穴です。
    メイン基板の下部にLED基板を別に配置することで、ハイパワーLED1灯だけで本体前後への分光を可能としています。

電気エンジニアの業務領域って?

Cerevoの電気エンジニアは要件定義から量産化まで、基本的にワンストップにて対応しています。
製品を作るには試作を数回行ったあと量産へと移行しますが、ここでは初回の試作の流れについて簡単に説明します。

まず受託開発の場合、お客様から「どうしたい」「こうしたい」といったご要望を伺います。例えば少量で数枚だけ試作したい、量産を見据えてコストを意識した設計をして欲しい、などなど。私達はそれを元に仮構成やお見積り、納期などを提案します。その後、納得いただき発注いただけたら、本設計に移ります。

電気設計には大きく分けて「回路設計」「AW設計」の仕事があります。

  • 回路設計では、要件を元に電子部品の選定、データシートの読み込み、部品同士の接続、消費電力や定数の計算などを行います。
  • AW設計では、基板の形状を作成後、回路設計や実装制限などに従って基板上に電子部品を配置・配線します。

料理に例えるならば、回路設計はレシピの作成AW設計は盛り付け方の指示、でしょうか。Cerevoはファブレス、つまり工場を持たない会社です。そのため基板の製造と部品の実装(調理と盛り付けの部分ですね)は、これらの設計データを元に専門企業にお願いしています。

完成した基板を受け取った私達は、お客様への納品に向けて動作チェックを行います。電圧、電流、負荷、信号の大きさなど、必要に応じて基板上の各部の動きを観測し、設計意図に沿っているか確認します。もしエラーや不具合が生じれば、この段階で対処を行います。その後、納品となります。

先輩エンジニアの基板デバッグ

なお、Cerevoでは担当エンジニアがお客様と直接設計~納品まで対応する場合がほとんどです。そのため、 素早く小回りが効くことが特長の一つです。
例えば昨今の電子部品の入手難であっても、その時点で適切な代替案を提示し、設計に反映させ、その場で部品発注まで行うこともあります。

おわりに

AWは電気回路の配線ですが、様々な事情も考慮して作成します。
通す電力、差動信号、基板の特性、部品配置など電気的な要件以外にも、製品のデザインや形状からくる制約、求められる耐久性、コスト感、温度や湿度といった使用される環境など、様々な条件から適切な基板を設計します。

もし電子基板を手にとって観察する機会があれば「どういう意図があるのだろう」と観点を変えてみると面白い発見があるかもしれません。

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