本記事は、Cerevoスタッフが業務や趣味について思うままに書き綴るアドベントカレンダー企画「Cerevo アドベントTechBlog 2017」の第3日目です。
Cerevo アドベントTechBlog 2017
http://tech-blog.cerevo.com/archives/category/adventcalendar/2017/
アドベントカレンダー3日目のカイです。
すでにご存じの方もいらっしゃるかとは思いますが、Cerevoは7月に自社のWebメディア「カデーニャ」を開設しました。
カデーニャ – ハードウェアのあんなこと、こんなこと
https://kadenya.news/
おかげさまで社内だけでなく社外の方からも「読んでるよ!」と言っていただけるなど、運営としては非常に嬉しい一方、このサイトを立ち上げた経緯などをあまりお伝えできてないな、という思いもあり、アドベントカレンダーという機会を使って「カデーニャがどんなことを考えているメディアなのか」というのを長々と書いてみたいと思います。
立ち上げの経緯
密やかにページ下部に掲載している「このサイトについて」をまずはお読みいただきつつ。
このサイトについて – カデーニャ
https://kadenya.news/about
話は遡って2007年頃、「キャズムを超えろ!」という匿名ブロガーだったCerevo代表の岩佐と知り合った頃、私はIT系ニュースサイトで編集記者の仕事をしていました。
最先端のハードやサービスに取材を通じて関われることは非常に楽しかった一方で、サービスやハードを作る立場の人たちが実に楽しそうなのを見て「話を聞く立場より作る側に行きたい」という思いが強くなり、いろんな経緯と縁あって今はCerevoで働いています。
Cerevoで働き始めてもう5年近くになりますが、やはりものづくりの現場は大変だけど面白いと思う一方で、記者の立場ではまったく見えていないことも多々ああるのだということも、メーカーの立場になって気がつかされました。それはハードウェアの技術的な仕組みはもちろん、ハードの原価だったり売り方だったりというビジネスの世界も含めて、現場にいないと見えてこないことは山のようにあります。
また、こうした情報が業界内、特にハードウェアスタートアップの中で意外なほど共有されていないというのも1つの気づきでした。ソフトの世界と違って物理的な製品があり、それを動かす流通や工場とのやりとりが発生するハードの世界では、Webで調べてもわからないことがソフト以上に多い。量産時のトラブルや中国工場とのやりとり、流通時の手続きなど、ほぼ同じようなところで自社はもちろん他社も苦労している様子を見て、もっとこういう情報が世の中に共有されるべきだ、という思いが強くなりました。
そんなハードウェアメーカーの視点から見た情報を発信していきたい、という思いで立ち上げたのがカデーニャです。商業メディアと違って媒体だけで利益を上げる必要はないのでPVを狙うことより、Cerevoだからできる情報発信をしていこう。いわゆるオウンドメディアと違って自社製品をアピールすることよりも、ものづくりにとって有益で興味のわくような情報を発信していこう。そんなことを目標として、7月の開設以降、営業日ベースで毎日更新を続けてきました。
代表的な記事のご紹介
まだ開設から半年にも満たない新米メディアではありますが、その中でも当初の狙いに沿って出せた記事もいくつか生まれており、いくつかの記事をご紹介します。
マンガ「カデーニャファクトリー」
https://kadenya.news/archives/category/comic
カデーニャの中で圧倒的人気を誇るマンガコンテンツ。PVを狙わないとはいえ、成長を見守る数値としてのPVは非常に重要なこともあり、「話題になるコンテンツは何だろう」といろいろ考えた中で「あるあるネタは共感される」「Webマンガは強い」というアイディアから「ハードウェアスタートアップのあるあるネタをマンガでやろう」というアイディアが生まれました。
とはいえ自分にはマンガを描ける素養があるわけでもなく、「大東京トイボックス」「スティーブズ」などの人気作品を描き、個人的にも大ファンかつ知人でもある漫画家のうめさんに相談したところ、ご紹介いただいたのがうめさんのアシスタントをされているたきりょうこさん。
マンガの構成はすべてたきさんにお任せしていて、こちらからはシンプルに「あるあるネタ」を提供しているだけなのですが、それをうまく4コマ、時には5コマでオチまで構成していただいており、担当としても毎回どんなマンガが上がってくるのかを楽しみにしています。
毎回平均的に人気のあるカデーニャファクトリーですが、ぶっちぎりのアクセスを誇ったのが下記の回。シェア数は1,000、PVは10万を超えただけでなく、マンガのバックナンバーもそれぞれ万単位のPVが集まるほどのアクセスを集めました。ハードウェアスタートアップに限らず、日本企業に見られがちな慣習ネタがソーシャルで共感を生んだようです。
第14話:かるくてはやい / マンガ「カデーニャファクトリー」 – カデーニャ
https://kadenya.news/archives/1550
毎週水曜日の更新を自分でも楽しみにしつつ、今後は書籍化という夢も密かに抱えております。あるあるネタは自社だけでなく他社ネタもやりたいので、カデーニャファクトリーの掲載ネタを募集する企画、なんてのもやってみたいところです。
ネジコンとは知らずに開発!? 伝説のゲームコントローラー開発者の苦闘
https://kadenya.news/archives/938
これも万単位のアクセスを集めた人気のインタビュー記事ですが、この記事はハードウェアを開発している現場をもっと知って欲しいという意図から生まれた企画です。
ハードウェアというのは製品そのものは評価されても、なかなか作っている人のこだわりや努力に日が当たる機会が少なく、あっても製品の企画担当だったり、デザイナーだったりと目に見えやすい部分が取り上げられがちです。もちろん企画やデザインもとても大事なことですが、それ以外にもハードウェアそのものを作っている人をもっと知って欲しいな、というのがこの企画の狙いでした。
ネジコン自体は生産終了後の今も人気のコントローラですが、内部の基板にまで話が及んだというのは例がなかったのか非常に反響の多い記事で、その後インタビューをお願いする際にも「こういう記事を予定しています」という代表例として非常に役に立っています。
社内が訊く『うごく、しゃべる、並列化する。 1/8 タチコマ』
https://kadenya.news/archives/1706
自社製品ネタではありますが、ネジコンと同様、ハードウェアは1人で作っているのではなくチームで作っているのだ、ということを伝えたいという思いを込めたインタビューです。
タチコマはアプリやサーバーも必要という点で、Cerevo製品の中でも担当エンジニアが多く、「メカデザイン」「電気設計」「組み込みソフト」「アプリ」「サーバー」という5つの分野をご紹介できたのはよかったと思う反面、登場人物が多いためにもっと掘り下げたい内容もあったけれど長くなり過ぎそうで諦めたという試行錯誤はあったたものの、「チームで動く開発」というテーマはお伝えできたのかなと思います。
インタビューの副産物として、製品の仕様をより開発の視点で細かく把握できたということで、製品について質問いただいたときの広報対応にも非常に役立ちました。今後も新製品出るたびにこういうインタビューは続けて行きたいと思っております。
電辞苑(ハードウェア用語集)
https://kadenya.news/archives/category/dictionary
ハードウェアならではの用語を、ただの用語解説だけでなく、実際に開発やビジネスの場で使えるような具体例まで盛り込んでいきたい、というコンセプトで更新しているのが、「電辞苑」というハードウェア用語集コーナーです。
用語集の対象は開発はもちろん流通や販売まで、ハードウェアのあらゆる部分をサポート。例えば「HSコード」という、輸出入に関わっていなければ一切知らないであろう用語も、海外工場での生産や海外での販売を視野に入れているのであれば必ず向き合わなければいけません。
輸出入には必須! あらゆる製品で使われる世界共通のコード「HSコード」
https://kadenya.news/archives/1537
また、テレビやPCではすっかり標準的な存在となったHDMIも、使う立場ではなく作る立場で考えると、認証や試験など、開発に必要なタスクがいくつも見えてきます。
映像と音声を同時に伝送できる「HDMI」の仕組みから対応機器の開発まで
https://kadenya.news/archives/2100
メーカーの生命線でもある販売価格も、業界内の標準的な数値まで踏み込んで解説。
みんなが知りたい「販売店への価格」他社は何%? どう決める?
https://kadenya.news/archives/2212
たんなる事実の羅列に終わらないよう、現場で日々業務と向き合うエンジニアや流通、営業の担当からもヒアリングしながらの更新はなかなか大変ではあるのですが、こうした用語の蓄積がいつかスタートアップの役に立つ日を夢見て更新を続けております。
メーカー視点で分析する「スマートスピーカー」の動向
https://kadenya.news/archives/1943
社内ではハードウェアの最新状況に対する意見や考えを雑談することも多く、「この雑談ってそのままネタになるよね」という考えから生まれたのがスマートスピーカーをメーカー視点から語るこの企画。私は単なる合いの手担当で特に何もしていないのですが、ちょっと他にはない視点のスマートスピーカー記事ができたのではないかな、と自負しております。
同様に、いつも仕事で当たり前のように話している製品パッケージの話も、簡単なようで実は奥深い世界である、ということを代表の岩佐が語ったのがこちらの記事です。
ものづくりの隠れた要!? 「箱作り」の面白さと難しさ
https://kadenya.news/archives/1915
今月はコラムにて新しい企画の立ち上げも予定しておりますのでご期待ください。
他の記事に比べるといわゆるニュースサイトに近いコーナーですが、できるだけ大事にしたいのが「スペックではなく体験」を重視すること。スペックや使い勝手を評価する記事は世の中にたくさんありますが、作り手の願いとしても、ただ単にスペックを比べるだけではなく、実際の利用シーンにおいてどんな体験を生み出せているか、というところを意識しています。
製品にはもちろんいいところもわるいところもあり、レビューであれば公平に見るべきなのですが、本コーナーではそうした公平さよりも、その製品ががんばっているところやこだわり、使ってみて初めて気がつくポイント、というところに注目していきたい。もうネタとして古いのでピンとこないかなと思いつつまもなく実写化されるということで話題になるかなという期待も込めて、桂正和先生の代表作「電影少女」でいうなら、ヒロインである天野あいがいつもいう「お前のいいところ、ひとつみっけ!」の精神を大事にしたレビューをこれからも続けていきたいと思っています。
最後に
あくまでCerevoの本業はハードウェアメーカーであり、カデーニャの運営も他の業務の合間も見ながらなんとか運用している、というのが現状ではありますが、「カデーニャのおかげでうまくいった」なんて声が聞こえてくる日を夢見て今後も淡々と運営を続けていく予定です。
ここが面白い、もっとこんなことして欲しい、などの要望がありましたら、ぜひご要望いただけると現場の励みになりますので、すでにカデーニャを知っておられる方も知らない方も、ご一読いただいた感想をお寄せいただけると幸いです。