本記事は、Cerevoスタッフが業務や趣味について思うままに書き綴るアドベントカレンダー企画「Cerevo アドベントカレンダーTechBlog 2019」の第2日目です。
Cerevo アドベントカレンダーTechBlog 2019
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こんにちは。Cerevoの椚座(くぬぎざ)です。
わたしは主に生産管理を担当しており、中華人民共和国の深圳市やその周辺地域への出張がたびたびあります。日本から深圳へ行く方法にはいろいろとありますが、このたびは「オーケー航空」という謎の航空会社を利用し、天津経由で深圳に入るという変わったルートにチャレンジしてみたので、その様子をレポートいたします。
はじめに、日本から深圳への移動方法としては、まず香港国際空港へ飛び、香港と隣接する深圳市との間にいくつかある出入境審査場のいずれかを陸路により通過して、改めて中国本土へ入境するという方法がよく使われています。深圳にも、深圳宝安国際空港という玄関口があり、日本との直行便も就航していますので、空路で深圳へ直接入ることも可能といえば可能です。しかしながら、FSC/LCC問わず多数のキャリアが運航している日本~香港間と比べると、日本~深圳間は便数が遙かに少なく、また概して不便な時間帯に飛んでおり、運賃も高めです。中国国内の別の空港を経由して深圳へ飛ぶ方法もありますが、その分だけ所要時間が長くなるため、本記事執筆時点ではやはり香港経由の移動に軍配が上がります。
ところが、2019年春頃から香港ではデモ活動が活発化し、この影響で交通機関にも混乱が生じるようになりました。同年8月には香港国際空港が占拠され、多数の便が欠航するという事態も発生。活動の意義や是非はともかく、往来に支障が生じるリスクが顕在化している以上、出張者としては代替手段を考えておかなければなりません。そこで、羽田空港または成田空港から香港を経由せずに深圳宝安国際空港へ至るルートを改めて探ることにしました。
そんな中で目にとまったのが、中国ローカルの航空会社「奥凱航空」で行く天津経由のフライトです。
時刻 | 空港 | 便名 |
02:30 | Tokyo / Haneda (HND) |
BK2990
|
05:30 | Tianjin / Tianjin Binhai (TSN) | |
07:30 | Tianjin / Tianjin Binhai (TSN) |
BK2945
|
11:00 | Shenzhen /Shenzhen Bao’an (SZX) |
同社が週3便で運行している羽田~天津濱海国際空港の深夜便を利用し、さらに国内線に乗り継いで深圳へ。終電間際に羽田へ行けば、翌日の午前中に深圳に到着するので午後から普通に活動できます。南方の深圳へ行くのに北方の天津を経由するのはいかにも遠回りであり昼間ならば使いたくないルートですが、深夜便の場合は、睡眠時間を確保する観点から飛行時間がちょっと長い方がかえって好都合とも言えます。そう考えると悪くありません。
しかしこの奥凱航空、寡聞にして初めて知った航空会社です。中国語での読みは「Ào kǎi」で「オーカイ」に近く英文名称は「OKAY AIRWAYS」。日本語で言えば「オーケー航空」ということになります。海外出張が多い社内の人たちもそんな航空会社は聞いたことすらないと言います。ググってみても旅行会社などのサイトは引っかかりますが、実際にオーケー航空を利用したというユーザー情報は驚くほど少なく、日本語による搭乗レポートはblog記事が1つある程度。3年ほど前から羽田空港に乗り入れており天津との定期便が運行されているにもかかわらず、ここまで話題にならないのはなぜなのでしょうか。
その謎に迫るべく発券。オーケー航空という一度聞けば忘れられない名称も相まって正直「このフライトは本当にオーケーだろうか?」という不安は拭えません。その上、情報があまりにもないために「もしや幻ではないだろうか?」というそこはかとない疑問までもが胸中をかすめるなか、羽田空港へ行くとそれは確かにありました。OK AIRこと、奥凱航空のチェックインカウンターが。なにせいままでその存在すらも知らなかった航空会社ですからひとまずは「本当にあったんだ」という奇妙な安堵に包まれます。
しかし、フライトの2時間半前であるにもかかわらずチェックインカウンターは長蛇の列ができておりました。自動チェックイン機が普及してからこんなチェックイン行列はあまり見られなくなりましたが、オーケー航空では未対応のようです。並ぶしかありません。
並ぶこと1時間半、ようやくチェックインができました。窓口の係員は中国人でしたが片言の日本語での対応でした。乗り継ぎの場合は、最初の搭乗地で最終目的地までの搭乗券がまとめて発行されることがありますがここでは羽田から天津までの搭乗券だけ渡され、天津から深圳の搭乗券は天津で受け取るように告げられました。
そしてBK2990に搭乗。機材は737-800で座席などはいわゆる国内線仕様。エンタテインメントシステムや電源といった気の利いたものは一切ありません。客室内の清掃は行き届いており概ね綺麗です。乗客の大半は中国人のようで日本人はわずか。羽田に駐機中であるにもかかわらず機内の雰囲気は乗った瞬間から完全に中国です。中国語の歌が流れ、中国語の会話が飛び交い、日本語の表示や会話はまったくありません。機内アナウンスも普通話です。あとわたしの前の座席には黒い制服を着てボディカメラを付けた航空保安員が搭乗していました。
この日の乗客は集まりが早かったようで、ほぼ満席ながら定刻よりも20分近く早発。滑走路へと向かうまでの間に乗務員の実演による安全設備の説明と機内の安全確認が入念に行われ離陸。乗務員の仕事ぶりは丁寧です。わたしは離陸直後に眠りにつき、着陸の1時間ほど前クッキーと水のサービスを行うカートの音で目覚めました。
中国風のあまり甘くない粉っぽいというか油っぽいというか、しかしやたらと口溶けのいい、なんかそんな感じのクッキーです。
定刻の30分ほど前に天津濱海国際空港に到着。現地時刻で朝5時、11月の天津はすでに寒く搭乗橋の隙間から吹き込むキンと冷えた空気で目が覚めました。
そして入国。やはり乗客の大多数は中国人のようで入国審査場の外国人レーンに先客はおらず入国までの待ち時間ゼロ。そういえば、国際線でありながら機内での入国カード配布はありませんでしたが自国民には不要だからでしょうか(言えばもらえたのかも)。入国カードはもらえなくても審査場に置いてあるので大丈夫です。
天津濱海国際空港は、第1ターミナルが国際線用、第2ターミナルが国内線用として運用されています。次に乗る深圳行きは国内線なので空港内の案内にしたがって連絡通路をとおり、第2ターミナルへ向かいます。表示がわかりやすくありがたいですね。
すると、奥凱航空と書かれたセルフチェックイン機がありました。しかし、なぜか予約情報なしとの表示になり使用できません。
しかたがないので有人のカウンターで搭乗手続きを行います。ここでは羽田と違って数人しか並んでおらず数分でチェックインできました。ローカルの航空会社なので中国語しか通じないのではないかと構えていましたが向こうから英語で話しかけてくれました。
改めて保安検査を受け搭乗口へ。ちょっと薄暗くていかにも中国の地方空港に来たぞという雰囲気が漂っていた第1ターミナルとは違い、第2ターミナルは明るく近代的な建築です。2時間乗り継ぎでしたが入国、ターミナル間の移動、国内線チェックイン、そして保安検査も含めて30分ほどで終わりました。
しばらく待機したのち深圳行きのBK2945に搭乗。機材はやはり737-800で国際線として乗ってきた羽田~天津と景色は同じ。こちらの乗務員の仕事ぶりも丁寧です。
この便も乗客の集まりがよくまたもや15分ほど早発。離陸後しばらく眠っておりましたが着陸の少し前にあんパンが配られました。
あんパンは中国の航空会社で提供される軽食としてなぜか定番です。加温されており日本のやつよりも美味い。これもっと食べたいぞ。
そして定刻の20分前に目的地の深圳宝安国際空港に到着。
というわけで、謎に包まれた奥凱航空、結果はオーケーでした。日本語は通じませんし日系航空会社のような慇懃な接客もありません。乗客の大半は中国人であり羽田にいながらにして中国ローカル線のような様相の機内では若干のアウエー感も否めませんでした。そういうのが嫌だという方にはあまりお勧めできませんがわたしにとってはどれも予想の範囲内。総評としては十分に快適でした。また利用するか?と聞かれれば、そのときの運賃次第ですが,普通に使うでしょう。
日本語情報の少なさは、単純に日本人の利用客がほとんどいないからなのでしょうが。羽田空港に乗り入れながら、日本人がここまで利用しない路線があるというのはなかなか面白いものです。