本記事は、Cerevoスタッフが業務や趣味について思うままに書き綴るアドベントカレンダー企画「Cerevo アドベントTechBlog 2017」の第7日目です。
Cerevo アドベントTechBlog 2017
http://tech-blog.cerevo.com/archives/category/adventcalendar/2017/
会社でハンドルネームで呼ばれていると彼氏に話をしたら「なにそれ罰ゲーム?」といわれたCerevo電気エンジニアのなるみと申します。
今年から個人的な趣味で、「鳴海製作所娯楽部」というサークル名でアナログゲームの製作・販売を行っています。
2017/12/2-3にビッグサイトで行われた「ゲームマーケット2017秋」という、アナログゲームのイベントにて新作を2つ販売しました。
今回はそこで発売したゲームの作り方(企画から製造、販売まで)のお話をします。
自己紹介
◆なるみ
これを書いている人。ゲームデザイン以外全部担当。
本職はCerevoの電気エンジニア(電気回路設計とかする人)
◆はむお
ゲームデザイン担当。前職はTCGデザイナ(TCGを作る人)。今は違うらしい(違いが分からぬ)。
文中では「デザイナ」と記載しています。
※TCG=トレーディングカードゲーム。有名なものでは、マジック:ザ・ギャザリングやガンダムウォーなどがある。
工程表
mymさんのやり方をパクり参考にし、まずは工程表を。
特に思い浮かば無かったのでエンジニア的な用語は当てはめていません。
- 製品企画
- ゲームデザイン
- テストプレイ
- キャッチコピーを考える
- カード絵を作る
- 箱絵を作る
- 取扱説明書を作る
- 生産するよ!
- 印刷されたものが送られてくる
- 実際の販売数量について
- 編集後記
- どさくさに紛れて次回の宣伝をしてしまう。
製品企画
普段からこまめにテーマをストックしているので、その中から面白そうなものをチョイスします。
今回は、以下の2作をチョイスしました。理由は手ごろだったから。主に金銭的な理由で。
- Perfect White -パーフェクト ホワイト-
前回のゲームマーケットにて発売した「俺の会社が労働裁判で潰れるわけがない!!」の続編的ゲーム。
「かろうし」し、変色した魂を真っ白(パーフェクトホワイト)にして来世の企業戦士として送り出すゲーム - ミスターフォックスの立ち退き大作戦
ミスターフォックスという町のボスが娘の誕生日にビルを建てたいと言い出し、予定地に住んでいる住民を立ち退かせるというゲーム。
これ以降、Perfect White -パーフェクト ホワイト-(以下、パーフェクトホワイトと表記)の作り方を例に、弊サークルでのゲーム製作について書いていきます。
ストックされてた当初のタイトルは、「ぼくのかんがえたさいこうのホワイト企業」。
その時のプロット(と呼んでいる)は、
「社員のホワイト満足度を最高にした方が勝ち。その社員のホワイト満足度を上げるのは難しいなって思ったら放逐することもできる」
このような感じで、ホワイト企業を作るゲームでした。
※「ホワイト満足度」とは、「ホワイトな環境で仕事をして幸せだわーというお気持ち度数」を一言で表現した造語です。
プロットから、さらにゲームっぽくなるようにアイディアを詰めていきます。
- 4人の従業員カードを獲得。それぞれに書かれている「ホワイト満足度」を全て満たした会社が【Perfect White】として新たな概念となる(ゲームの勝利条件)
- 自分の手番になったら、「業績さいころ」を振ってその手番での会社の業績を決める。
- 業績さいころは「平常/盛況/不況」とか? 盛況だとデスマーチ、不況だとリストラが発生。
- 従業員はみんなブラック企業で「はかなく」なった社畜たち。彼らのホワイト満足度をマックスにして、【Perfect White】という概念に消化させる(ゲームの目的)
- プレーヤーは天使。神様から、「このままでは日本マジヤバいから少しでもこの負のオーラを浄化せよ!」との曖昧な指令を得た社畜天使たち。
その後、同時発売の「ミスターフォックスの立ち退き大作戦」と同じようなシステムになりそうだったので大幅に軌道修正しました。
- 「業績サイコロ」を「神の見えざる手」に変更。
- 「神の見えざる手」を振り、「ホワイト満足度」がMAXになる従業員を場に出す。
- 場に出たカードは「神の見えざる手」で出た目の行動をすることができる(場に出ないと行動はできない)
- 場を「輝く魂のステージ」とし、「SSS(Shining Soul Stage)」という名称にした。完全にその場のノリ。
- 場をSSSという名称にしたため、「ホワイト満足度がMAXになる従業員」は、「魂の輝きを取り戻した」という設定にした。
- 他プレーヤーや自分の場のカードで赤・緑・青がそろっていたら【Perfect White】になる。
- 自分の手札と、自分の場のカードがすべてなくなった人の勝利。
赤・緑・青は光の三原色を指します。
3色そろうと魂は【Perfect White(完全なる白)】となって、来世の企業戦士として送り出されるのです。
RGBの設定が出た時点で、タイトルが「Perfect White」である意味が強くなったので割と満足です。
秋葉原のルノアールで、あーでもないこーでもないと議論した甲斐がありました。
ゲームデザイン
サイコロを使うということが決まっているが、6種類の効果を載せるのは紙面がきゅうくつで嫌だとデザイナに話したところ、4面サイコロを使用する提案をされ、形がかわいかったので即答でOKしました。
6面サイコロを使って、効果では使わない数字を作ったり、同じ効果にしたりもできるのでは?と聞いたところ、「それは違う」と却下されました。魂が合わなかったのだと思います。
カード枚数は、「ミスターフォックスの立ち退き大作戦」(カード枚数80枚!)を同時に作っている関係で、できるだけ少なくしたいと要望を出していました。
すると、36枚(ただし全てユニークだ)のゲームが出来上がってきたのです!
同じ顔のカード3枚セット(RGBで)*12種です。
出てきたイラスト指示もパーツを差し替えるだけなのでとても簡単。要望は出してみるものですね。
パーフェクトホワイトでは、テキストの作成と効果の決定がデザイナの仕事になります。
デザイナに「ゲームを作る上で気を付けた点を挙げてほしい」と伝えたところ、以下の反応が返ってきました。
「カードの効果は変に偏らないようにしたくらい?でも、気をつけるというか、普通にやるよねラインな気がする」
「パーフェクトホワイトには色があるけど、別に色で役割があるわけでもなく、色で効果がバラけちゃう方が問題だから全体的に均等にしたよ」
もうひとつ、
「パーフェクトホワイトでは偏らないようにしてたけど、偏った方が面白いこともあるよ」
らしいのでこれも合わせて記載しておきます。
テストプレイ
公民館を借り、お友達を呼んでテストプレイ会を実施しました。他のゲームも遊べるし、むしろそっちがメイン。
お友達も仕事でTCGを作っている人たちが多いので、的確な指摘を貰えて大変助かります。
この段階ではカード絵ができていないことが多いので、テスト用デッキを作ってテストを行います。
効果を描いた紙を印刷し、カードスリーブに入れて作ります。
スリーブの中には、みんなの部屋に転がっているTCGのカードを一緒に入れると強度が出て良い感じです。
指摘事項をうまく取り入れて、さらに楽しめるゲームを作っていきます。
人を集めたテストプレイはだいたい2回行い、ゲーム自体は5~8回は回したと思います。
それ以外は2人でテストすることが多いです。
キャッチコピーを考える
ゲームを表す分かりやすい言葉があると、どのようなゲームであるのか伝えやすくなる(気がする)ので、考える。
「俺の会社が労働裁判で潰れるわけがない!!」のときは、
「ろうどうりょく を りえき にかえろ!」
ゲームの内容そのままです。今回は熟考の結果
「もう はたらけない」
になりました。
ゲームとの関連性は濃いのか薄いのかよくわからないが、雰囲気が気に入ったのでこれに決定。
このキャッチコピーだけでどんなゲームかは伝わらないと思うけれど、きっとそんな日もある。
ちなみに、「ミスターフォックスの立ち退き大作戦」のキャッチコピーは「ご褒美目指してレッツ立ち退き♪」です。
ゲームには毎回ストーリーを付けています。ストーリーがあると、何をするゲームであるのかがスッと頭に入ってきます。
ゲーム内の用語もストーリーに合わせて調整しています。
プロット段階のゲームストーリーは
はたらけなくなってしまった「はたらくさん」たち……
その黒ずんだ魂を漂白し「PerfectWhite」へと昇華させる天使たちの戦いが
今はじまる――
でした。 これを、もう少しゲームの内容に沿ったものに変更。
かれらの黒ずんだ魂を漂白するため、真綿のような労働環境で包み込み、「ホワイト満足度」を上げましょう。
「ホワイト満足度」が上昇した「はたらくさん」たちは、「Perfect White」という概念に昇華し、来世の企業戦士として新たな生を授かることができるのです!
※「はたらくさん」とは、カードに書かれているキャラクター達の総称を指します。正式名称は「はかなくなってしまったことによりようやく個を取り戻し始めたもうはたらけないはたらくさんカード」です。
カード絵を作る
デザイナより、「あまり個性のない顔が良い」と言われたため、個性が薄い顔を用意しました。自分で描いたんだよ。
男性・女性とそれぞれ基本パーツを描き、髪型と眼鏡有り無しで外観を変えています。
カードデザインは「天界っぽさ」をイメージしました。あくまでも私の中のイメージです。
はじめは好物の記載は無かったのですが、左下が空いていて寂しかったので独断で追加しました。「これは何ですか?」と質問され、「生前の好物です」と説明すると失笑されることが多いです。
左上のRの文字は、色の判断が難しい方向けの記載です。色を使うゲームなのだけれど、そんな皆さんにも楽しんで貰いたいなと思って入れました。需要があったのかは分からないです。
箱絵を作る
今回はサイコロを入れるため、高さ30mmのキャラメル箱にしました。
化粧箱に憧れを抱いているのですが、高くて手が出せないのです。
大きいサークルになって化粧箱入りのゲームを出したい夢を持っていますが、遠い未来です。
取扱説明書を作る
デザイナに取説の下書きを書いてもらいます。
これをもとに、いい感じに取説を書いていきます。
時折、「なんでこの表現?」などといった疑問が出てきますので、逐一確認して進めていきます。
すごく関係ない話ですが、前作「俺の会社が労働裁判で潰れるわけがない!!」のカード絵と取説を見た弊社メカデザイナーに、
「お前はillustratorを知らない。俺がお前にillustratorの何たるかを教えてやる(要約)」
とdisられたため、そのうちプロに教えを請いたいと思っております(メモ)
今回は試行錯誤しながらひとりで頑張りました。
生産するよ!
今回のカード、箱、取扱説明書の印刷は萬印堂さんにお願いしています。
印刷を外部にお願いするため、あらかじめ印刷数量やご予算を決めます。
前作「俺の会社が労働裁判で潰れるわけがない!!」がショップ販売含め300個近く売れており、初回のイベント販売では100個完売していました。そのため、1回のイベントで完売しない量で、ショップ販売をしても手元に残るであろう数量ということで、最低ラインを200個にしました。
ゲームをプレイしてフォックスの方がゲームとして面白いと(当時は)思ったので、フォックスを300個、パーフェクトホワイトを200個に設定しました。
※これを書いている現在は、パーフェクトホワイトの方が好きです。
萬印堂さんはWebサイトに詳細な価格を記載してくれているため、自分で原価計算ができます。
そこから自分たちが作りたい内容の価格を算出し、仕様を詰めていくこともあります。
今回はカードも少ないので、ざっと計算して、問題なくお支払できる金額であったので仕様の変更はしていません。
製作費は以下になります。
印刷費 174,960円(カード36枚、キャラメル箱の印刷代)
サイコロ 10,029円(2回に分けて購入したので、送料分高くなった)
合計 184,989円
実は発注時にうっかりパーフェクトホワイトを300個で注文してしまい、請求書が来てから大変びっくりしました。
これが噂の誤発注!!!
ただひたすらにつらかったのです(財布が)
サイコロはAliExpress(アリエク)で調達しました。
ただひたすら4面サイコロの画像を見ていって、ゲームに合いそうなものを見繕いました。
アリエクは似た形状のものがたくさん出てくるので見ていて楽しいです。
何を買うか決めたら、初めに数個サンプル購入しました。
それをみて問題なさそうだったので必要数を別途購入しています。
アリエクは数個だと送料無料ですが、数を買うと送料が必要になることが多いです。
到着に1か月ほどかかる場合がありますし、基本的に忘れた頃にやってきます。
ですが、本当に来ないこともたまにあります。
不安なときは発送業者を変えるといいかもしれないです。
Alibaba(アリババ)で直接調達しても良いですが、今回はめんどくさかったからアリエクで。
アリババで取引する場合は、私はスカイプで連絡を取り合うことが多いですが、WeChatを使うこともあります。
あとはアリババのチャットツールもあるようですね(使ったことはない)
つたない英語でもやり取りできますし、PayPalで払いたいって言うとPayPalにしてくれるから良い感じ。
ただしPayPal手数料取られることがあります。PayPalで支払えないところもあるのでご注意。
結局300個調達することになったので、アリババで購入したほうが安くなったかなと思いました。
後の祭りです。
印刷されたものが送られてくる
箱は折りたたまれた状態で送られてくるので自分で組み立てて、取説を折って、カードと取説とサイコロを入れるという作業が必要になります。
取説折りが本当につらいので、次回はお金を出して折ってもらおうと思っています。
箱もカードも余部が入っていて、少し汚れているものを抜くと300個作れました。
実際の販売数量について
ゲームマーケット2017秋での販売数は以下の通り。
- パーフェクトホワイト 27個
- ミスターフォックスの立ち退き大作戦 30個
前回の「俺の会社が労働裁判で潰れるわけがない!!」に比べると全然少ないですが、50個くらい売れるといいなぁと思っていたので、こんなもんかな?とも思います。
ショップさんに委託をお願いしていて、そちらで結構持って行っていただけました。ありがたい。
1年くらいかけて販売できるといい感じなので、地道に販売していこうと思います。
この数量を見ると、「適切な製作数は200個」と感じていたのは大体あっていたのかなと思います。
この記事を読んだ方が興味本位で購入してくれることを楽しみにしています(以下のお店で買えます)。
Role&Roll Station – R&Rステーション秋葉原店
HOBBYBASE イエローサブマリン
編集後記
色々な人から、「ゲームマーケットは事前の告知で7割決まる」といわれており、なんで趣味なのにそんなに広報頑張らなきゃいけないんだろう…と思いつつも、これも勉強だと思って色々やってみました。
やったこと
- チラシを作る
ゲームのチラシを作って、ロールアンドロールステーションさんに置かせていただきました。 - 適度にゲームマーケット公式サイトで告知する
きちんとしたルールを書いたくらいですが。 - Twitter?
適度に告知を進捗を書いたくらいです。
……よく考えると大したことやっていないので、弊社広報の皆様にお勉強させていただこうかと思います。
こうやって自分で企画から販売までをやると、それを専門にしている人のすごさを理解できてとても良いです。
色々な人のやり方を少しづつ取り入れていきたいですね。
どさくさに紛れて次回の宣伝をしてしまう。
「パンツはどこに消えた?」というボードゲームを作る予定です。
(なぜか)パンツをはいていない男児が、猫が咥えていったパンツを、個人面談で家に来ている先生+ママに見つからないように捕まえるゲームです。
小学校の先生をやっている友人から「子どもも遊べるちょっとブラックなゲーム作ってよ」と前々から言われていたので、それを意識して作ります。かろうしとか、社畜とかいう悪い大人の言葉は出てこないよ。でも子供が好きなパンツとかそれ系の要素は入れていきたいです。
概算見積もりの段階で製造費が80万を超えており、ここから仕様をそぎ落として良い感じに落とし込むお仕事が待っています。
来年4月に行われるゲームマーケット大阪にて販売するはずです(印刷費がどうにかなれば)
締め切りが来年1月末くらいなので、たいへんつらい。
ついでに言うと、その1か月後にゲームマーケット2018春向けの締め切りがやってきます。
そこでは「理想の上司」という、部下のやんちゃにうまく耐えて仏の顔(残機のようなイメージ)を守るゲームを出します。
仏の顔が3回使用すると理想の上司でいられなくなってしまいます。つらいゲームだ。本当にいいのだろうか。
ついでに宣伝
俺の会社が労働裁判で潰れるわけがない‼
ミスターフォックスの立ち退き大作戦
パーフェクトホワイト
はい、以上で鳴海製作所娯楽部流ボードゲームの作り方を終わります。
ゲームマーケットで感じたいろいろなことは、別途個人ブログでまとめようと思います。