ONUの向こう側の世界〜光通信の上位層に迫る〜


こんにちは。電気エンジニアのcronosです。

さて今回は、いつも皆さんがご家庭で使っている光回線、持ち歩いている携帯電話の繋がっている上位層ネットワークについて、簡単に仕組みをご紹介したいと思います。

●光通信って

光通信という名前、最近よく聞かれるようになったような印象ですが、ずっと前、約30年前から光通信自体は実用化されていました。ユーザサイドのサービスとしては、2000年から”光・IP通信網サービス”という名前でスタートしています。

光通信は外から来た光ファイバが家庭やオフィスに設置されているONU(光回線終端装置)につながっています。
今回はこのONUを出発点にして、光通信の上位層についてみていきたいと思います。

●ざっくりとした名前と距離

全体の話の前に、光通信の距離レンジによっておおまかに名前が付けられていますので、以下かんたんにご参考ください。

アクセス : 局舎からご家庭までの通信網。
メトロアクセス : 〜40kmの都市内通信網。トポロジはリング。
メトロコア : 40〜100kmの都市内通信網。 トポロジはリング。
ロングホール : 100km〜 の都市間(リング)・国間通信網

●通信の方法

以前の光通信は狼煙やモールス通信のように、情報を”1/0″の2値に分け、それぞれの通信方式で送っていました。
(例えば狼煙なら煙が出ている=1など) 細部を割愛すれば0/1(消えている/光っている) で表現しています。

ON_OFF

最新の通信方式では、光の波の角度(偏波と呼びます)が異なる信号を重ね、また分けられるといった特性を活用して、偏波が直交した2つの波を組み合わせて通信を高速化する方式(PSK,QAM)が使われています。

TETM

●ONU(Optical Network Unit/光回線終端装置)

ONUとは室内に置かれたにある白や黒の箱のことです。光で降りてくる情報をイーサネットに、イーサネットからの情報を光に、それぞれ変換して送り出す装置です。
昔、フレッツTVというサービスが難視聴エリアを対象に光通信を始め、いまでは映像と音声などを含むデータが1本のファイバを通って降りてきます。

現在日本で運用されている、大多数の光ネットワークはPON(IEEE802.3)と呼ばれる方式です。
光ファイバは、ONUから辿っていくと最終的に局舎に繋がっている訳ですが、1家庭に1本、1000家庭なら1000本が局舎まで個別に繋がっている訳ではありません。

局舎から1本で出た光ファイバは、最終的に32分岐されてONUに繋がっています。ただ分岐しているだけなので、32個のONUには同じ情報が届いてしまいます。
そこで、ONUは局舎に置かれているOLT(Optical Line Terminal)とタイミングを合わせて、自分のデータが届くタイミング、自分のデータを送って良いタイミングを得て1本のファイバを時間でシェアして利用しています。

OLT_Data

という事は、そのタイミングをいじってやれば他の家庭に行くデータを盗み見する事が出来るのか?というと、頑張れば出来るかも知れませんが、データは暗号化されています。これもONUのお仕事です。

データは先述の通り時分割でシェアしていますが、映像と音声などを含むほかのデータはそれぞれ別の送り方をしています。

光はには赤色、緑色、青色の種類があり、それらをを混ぜ混ぜることで白色として送ることも、そのほかの色として送ることも出来ます。この光の色をまぜるのには、プリズムを使います。
皆さんも昔遊んだ事があるかも知れませんが、プリズムに光を通すことで、白い光を単色に分ける事も混ぜることもできるのです。

Prism

実際の光通信では、目に見えない赤外線を利用して通信をしています。
これは、光ファイバは波長(光の色)によって損失が異なるので、ロスの少ない波長を選んでいることが理由の一つです。

局舎→家庭(ダウンリンク) では、光の色を2色使って情報を送っています。
データ:1.49um
映像:1.55um

家庭→局舎(アップリンク) は、ダウンリンクとは違う色を使っています。
データ:1.3um

●ONUの先

やっと局舎の中に入ってきました。
先ほども登場したOLTによって集められたデータは、ある波長の高速光信号(一昔前で10G、今は主流が40Gで流行りは100Gです)にされて上流ネットワークに流れます。

Access_LH

・上流(メトロアクセス・メトロコア・ロングホール)ネットワーク

光ファイバはリング状に接続されています。
東京の環状線、山手線を連想していただくとイメージしやすいと思います。 駅が局舎で、線路が光ファイバだと思ってください。電車がデータの流れです。(詳しくは違いますが、ここは概念という事で想像してください)

例えば電車にのって上野から東京に行きたい人もいれば、品川に行きたいひともいます。リング状のネットワークになっているので、電車(データの流れ)に乗って目的の駅まで移動します。実際は、上野駅から東京駅 の間に経路を作って、必要なデータをやり取りします。
前職で私は、この経路を制御する装置(ROADM (Reconfigurable Optical Add/Drop Module)、WSS (Wavelength Selective Switch)など)、超低位相ノイズレーザ光源の設計などをやっていました。

光ファイバは髪の毛程度の細さ(0.125mm)しかなく、被覆で保護されているもののデリケートなものです。何らかの事故で光ファイバが断線してしまっても通信を継続出来るように、リングは二重になっていて、時計回り、反時計回りのデータの流れが作られています。

1本の光ファイバにはとても多くの情報(約40波x40G = 1.6Tbit/s実用ベース)が乗っています。
例えば上野駅から必要なデータを乗せ(アド)、東京駅で降ろします(ドロップ)。

リングは1本ではなく、たくさんのリングが重なってメッシュを構成しています。この数多の経路・波長を駆使して目的の端末まで伝えるシステムになっています。
これらの通信経路は、全て光の状態で行います。電気には変換していません。
ただ流石に長距離伝送すると光の強さが弱くなってしまうので、随所に光アンプが入っています。
国と国の通信もロングホールの1端末に過ぎませんが、国間は非常に距離が長い海底ケーブルを通るため、光を光のまま増幅するアンプがある距離ごとに入っています。興味がある方は”EDFA”や”エルビウムドープ光ファイバアンプ” とかで検索してみてください。

●ということで

私たちが何気なく使っているPCやスマートフォンで、海外のサーバにアクセスしながらコンテンツを楽しんでいる裏には、実はすごいシステムが隠れているんだよ、という事を少しでもお伝え出来ていれば幸いです。

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