一般の誤家庭のアパートのネット環境

自宅のネットワーク機器

はじめまして。今年Cerevoに入社した,ソフトウェアエンジニアのぐりです。
ソフトウェアエンジニアですが趣味では電子工作で回路設計などもやっています。

約1年ほど前から学校に併設されている寮を出て一人暮らしをはじめました。ソフトウェアエンジニアが一人暮らしをするときに重要なことは、良質なインターネット回線を用意することではないでしょうか。寮の非常に劣悪なネット環境での生活はとても辛かったので一人暮らしのネット環境にはかなり力を入れました。

今回は、私の一人暮らしの自宅(アパート)のネット環境について紹介していきます。

インターネット回線を契約する

一番重要なのが自宅に引き込むインターネット回線です。回線の種類は、固定回線なら光やCATV、移動回線ならWiMAX2+やLTEなどがあると思いますが、安定性・遅延・速度を考えると,光回線一択になるでしょう。光回線と一口に言っても事業者・プロバイダ・回線の引き込み方など様々な種類があり、その選択次第では光回線なのに残念なネット環境になる可能性もあります。

関東で安定して速いインターネット回線といえばNURO光が挙げられます。もちろん私も申し込みましたが,宅内工事の段階で導入できないという判断になりました。

NURO光を集合住宅で引き込む場合集合住宅向けの工事方法として、MDFを経由して光ファイバーを引き込む方法と戸建てと同様にベランダなどからケーブルを引き込む方法のどちらかが取られます。しかし私のアパートにはMDFがなく、戸建てと同様の引き込み方はNURO光を提供するSo-netとダークファイバを借りる先のNTTとの契約上不可能とのことでした。

そこでフレッツ光 ネクスト(以下フレッツ光)を契約する方針にしました。

フレッツ光には、ホームタイプとマンションタイプがあリます。ホームタイプは、戸建て向けで光ファイバーを最寄りの光スプリッタから電柱を経由して引き込みます。マンションタイプは集合住宅向けで、建物に設置された共用設備から回線を各戸に引き込みます。マンションタイプでは、MDFに共用設備として設置された光スプリッタから各戸に光ファイバーを配線する「光配線方式」と共用設備の装置まで光ファイバーを引きそこから各戸へは既設の電話線を使用してVDSLで通信する「VDSL方式」の2種類が主に使われています。このうちどちらになるか、というのは建物で決まっています。

速度を気にするなら「フレッツ光 対応」を謳うアパートには要注意

VDSL方式では基本的に最大速度100Mbpsのサービスになってしまいます(1Gbps対応のモデムも存在するらしいですが…)。最近では、光回線は1Gbpsが普通で10Gbpsのサービスも提供されている中100Mbpsは流石に……と思いますがフレッツ光のサービスを提供している以上「フレッツ光」です。

VDSL方式の設備しか導入されていない建物では、マンションタイプで光ファイバーを部屋まで引き込むことはできません。もちろん一入居者の希望で設備を変更することはできないので、光ファイバーを引き込むため人はホームタイプを契約するしかありません。

結局、ホームタイプを契約してなんとかエアコンダクト経由で光ファイバーを引き込むことができました。

ネットワーク機器

せっかく1Gbpsの回線を引いたのならルータやWi-Fi APもちゃんとしたものを用意します。

自宅のネットワーク機器

こちらが自宅のネットワーク機器です。机の下にダイソーのメタルラックを置いて、そこに設置しています。写真に写っているのはONU、ルータ、PoEスイッチ、NASです。Wi-Fi APは黄色のLANケーブルで写真外に設置されています。

ルータ YAMAHA RTX830

ルータは定番のYAMAHAを選択しました。家庭用ルータは安定性で不安があるのと細かい設定ができないため検討するまでもなく不採用です。YAMAHA以外ではCiscoやNEC(Atermシリーズではなく業務用のUNIVERGEシリーズ)などがいいと思います。

機種はRTX830を選択しました。購入価格は約45,000円程度でした。
https://network.yamaha.com/products/routers/rtx830/index

一般的な逸般の誤家庭(※1)でYAMAHAルータを選ぶとしたらNVR510かRTX830かRTX1210から選ぶことになると思いますがVoIPは使わないのでNVR510は不要、RTX830とRTX1210は機能はほぼ同じでポート数やPPPoEのセッション数程度しか違いがないのでRTX830が無難だと思います。ちなみにRTX830もRTX1210もNvidiaのグラボではありませんよ。

Wi-Fiアクセスポイント Buffalo Airstation Pro WAPS-1266

Wi-Fi AP WAPS-1266

Wi-Fi APももちろんYAMAHAにするつもりでいましたがルータだけでかなりいい値段になってしまったので予算の都合上安めのBuffaloを選択しました。業務用のAirStation ProのエントリーモデルWAPS-1266です。購入価格は約16,000円です。
https://www.buffalo.jp/product/detail/waps-1266.html

11acの866Mbpsに対応しておりマルチSSIDとタグVLANが使えるので一般的な逸般の誤家庭では十分かと思います。安定性や通信速度などには不満はないですがやはりYAMAHAで揃えた方が管理がしやすいので将来的にはWLX202に置き換えたいところです。またこのような業務用のWi-Fi APは大抵PoEに対応していてACアダプタが同梱されていません。そのためPoEに対応したスイッチやインジェクターが必要です。

PoE搭載ギガビットスイッチ TP-Link TL-SG108PE

Wi-Fi APに給電する目的で、PoE(Power over Ethernet)の電源供給ができるスイッチを購入しました。8ポートスイッチでそのうち4ポートがPoE対応のTP-Link TL-SG108PEを選択しました。購入価格は約8,000円です。なお、同等のスペックのNETGEAR GS108PEと非常に見た目が似ています。あれ、型番も……。

NAS NETGEAR ReadyNAS212

NASは、ネット販売限定モデルのReadyNAS212です。本体の購入価格は約25,000円で、中に搭載した6TBのHDD2台は1台当たり約12,000円で購入しました。もちろん、RAID1で運用していますが、全く同じロットのHDD2台にしてしまったので、近いうちに1台だけ置き換えようかと思ってます。なお、非常に困ったことに電源ボタンなどの青色LEDが非常に眩しくて眠れないので,アルミホイルで遮光しています。

ルータの設定

NTTのフレッツ光のサービス自体はインターネットへの接続を提供していません。NTTが提供するNGN(Next Generation Network)と他社のプロバイダを経由してインターネットに接続することになります。

フレッツ光では、ルータとプロバイダの間の通信と認証をPPPoEで行いますが、NTTが各プロバイダに提供しているPPPoEの終端装置の帯域がユーザ数に対して狭いため、そこがボトルネックとなって速度が低下してしまいます。それを回避する設定をします。

NGNとIPv6とBiglobeの「IPv6オプション」

インターネットに出るのにPPPoEを使わなければ速度が落ちることを避けられます。NGNはIPv6で構築されているので、そこから直接IPv6でインターネットに出ることができます。これをIPoEと言っているようです。

IPv4のパケットはNGNに直接流すことができないので、プロバイダとの間でIPv6のトンネルを張り、IPv4パケットをIPv6でカプセル化してNGNを抜けて、その先のプロバイダでIPv4パケットに戻してインターネットに出ることになります。DS-Lite(懐かしいゲーム機ではない)やMAP-Eなどがその技術です。

私が契約したプロバイダのBiglobeでは「IPv6オプション」という名前でMAP-Eのサービスを提供しています。MAP-EのサービスはJPNEも「v6プラス」という名前で提供しています。

RTX830の「MAP-E対応」は「v6プラス対応」だった

私が購入したルータRTX830は「MAP-E対応」と謳っているので、早速設定してみたところ、実はv6プラスのMAP-Eのみに対応しているようで、さらに細かい設定を手動でしないといけないことが分かりました。

設定は、こちらのブログを参考にさせていただきました。
issue: biglobeのIPv4 over IPv6でハマった話 (RTX830)

大雑把にいうと、トンネルの接続先になるbiglobe側のアドレスの情報、自分のIPv6アドレスから計算できる、変換先のIPv4アドレスとそのポート範囲の情報をRTX830のコンフィグに書く作業が必要です。

速度の計測結果

MAP-Eでの接続とPPPoE接続との速度の比較をしてみた結果がこちらです。

速度の計測結果

平日の日中というオフピークな時間に計測したので、大きな差はみられませんが、夜になるとPPPoEは半分ぐらいまで速度が落ちます。

[追記] 平日の夜23時ごろに計測してみた結果がこちらです。恐ろしいほど大きな差が出ています。

速度計測結果(夜)

PPPoEとMAP-Eの使い分け

MAP-EはPPPoEよりも早いのがメリットですが、VPNサーバなどを立てた時にIPv4で外からアクセスすることができません。そのため、PPPoEも共存させないといけません。LANのIPアドレスを大きく2つに分けて、ルーティングの設定でIPアドレスの範囲によってMAP-E側に出るかPPPoE側に出るか振り分けています。

tunnel 2がMAP-Eのトンネル、pp 1がPPPoEで、192.168.100.2/24がPPPoE、それ以外の192.168.100.0/24と192.168.101.0/24と192.168.110.0/24はMAP-Eとなるように設定しています。

ip route default gateway tunnel 2 filter 1 gateway pp 1 filter 2
ip filter 1 pass 192.168.100.0/24,192.168.101.0/24,192.168.110.0/24 * * * *
ip filter 2 pass 192.168.102.0/24 * * * *

ちなみに,192.168.110.0/24はゲスト用Wi-Fiに割り当てています。


以上、私の自宅アパートのインターネット環境についてでした。ルータもWi-Fiも安定していて快適なネット生活を送れています。ずっと引き篭もって入られます。他にもVPNリモートアクセスの設定などもありますが、また機会があれば紹介しようと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

※1 逸般の誤家庭
専門的な知識を持って自宅を整えている様子。とくに開発者の中ではごく普通と考えられるため、一般のご家庭とは区別して記載される。

逸般人(いっぱんじん)とは、一般的でない、それを逸脱した人間のことである。(ニコニコ大百科

本記事は、Cerevoスタッフが業務や趣味について思うままに書き綴るアドベントカレンダー企画「Cerevo アドベントカレンダーTechBlog 2019」の第13日目です。

Cerevo アドベントカレンダーTechBlog 2019
https://tech-blog.cerevo.com/archives/category/adventcalendar/2019/

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