本記事は、Cerevoスタッフが業務や趣味について思うままに書き綴るアドベントカレンダー企画「Cerevo アドベントTechBlog 2017」の第20日目です。
Cerevo アドベントTechBlog 2017
http://tech-blog.cerevo.com/archives/category/adventcalendar/2017/
こんにちは、Cerevoで海外営業を担当していた美谷です。8月末にFutuRocket(フューチャーロケット)という会社を起業しましたが、現在も業務委託としてCerevoでの海外の活動を引き続きサポートさせていただいています。
今年は非常に、フランスに行く機会が多い年でした。
- 3月ストラスブールBizz & Buzz出展(アクセラレータプログラムOrange Fab Labによる招待)
- 4月リヨン sido出展(DMM.make参加の企業らと出展)
- 5月ツールーズ Fab Lab Festival(個人出展&パネル登壇)
- 6月パリViva Technology(主催者招待による出展&ピッチ)
- 7月パリJapan Expo(出展)
- 11月パリ、ツールーズ、マルセイユ(起業後に商談のため訪問)
このようにフランスに行く機会が多かったのですが、近年ハードウェアスタートアップがフランスで盛り上がってきているというのがその背景のひとつとしてあります。
Cerevoに入社してすぐの2015年に、ラスベガスで行われる世界最大の家電見本市「CES」に参加させていただきましたが、その時、フランスからはすでに100社近くのハードウェアスタートアップが来ていました。その時点で日本から出展していたスタートアップは弊社を含めて10社に満たないくらいだったかと思います。
2016年にはフランスからは約160社、そして今年は260社のハードウェアスタートアップがフランスから出展していました。来月のCESでは300社を超えるかもしれません。
上の写真は、今年1月のCESで撮影したもの。スタートアップが特に多く出展しているSands Expoという展示会場の1階のフロアーマップです(余談ですが、Cerevoは近年、同じSands Expoの2階で出展しており、来年1月の「CES 2018」でも2階の入り口側に出展します)
この1階のフロアーマップで、ピンク色で塗りつぶされているのが、フランスのスタートアップ。30%近くはフランス勢が占めているという勢いです。
弊社の岩佐のブログでもCESでの盛り上がりを紹介させていただいています。
大手メディアが書かない、CES2017の実態(出展者目線) – キャズムを超えろ!
http://d.hatena.ne.jp/wa-ren/20170116/p1
こうした数多くのスタートアップもパリ中心ということではなく、リヨンやツールーズ、南仏といった各地域ごとに競い合って出展を行っています。
その中でも、今年、昨年末から3回訪問することになったツールーズは面白い地域です。
ツールーズにはエアバスの本社があり、欧州宇宙機関ESAの中心となるフランス国立宇宙研究センターの研究部門が置かれています。そのため、エンジニアや海外から来ている働いている人の割合が多く、パリ以上に英語が通じると感じる街です。
2016年のCES Innovation Awardを受賞したCatspadというスタートアップもこのツールーズが拠点で、偶然あるコワーキングスペースを訪問したときに再会しました。
このツールーズには欧州最大のFab Labが置かれており(うろ覚えですが、もともとFabLabを始めたメンバーでMITにいたフランス人が、ツールーズ出身で、最初にツールーズで始めたのだそう)、今年は、欧州全体のFab Labのカンファレンスがツールーズで開催されました。来年は、GlobalでのFab Labカンファレンスがツールーズで開催される予定です。
この他にも、まだ訪問したことがなく来年行ってみたいと考えているLes Machined de L’ileの巨大な機械仕掛けが見られる、ナントのMaker Faireや、スマートシティの取り組みで知られるアンジェなど特色のある地域があります。
またパリでは、世界最大規模の古い駅舎を改築したstation Fというスタートアップキャンパスがつくられており、すでに一部オープンしています。
こちらはstation Fの外側、一番向こうまでもstation Fの敷地内で、遠くのほうはまだ工事中でオープンしていません。
必然的に、なぜハードウェアスタートアップがフランスでこれだけ盛り上がっているの? という質問が必ず出てきます。
起業をしても、失業保険と同じように最低限の収入が一定期間もらえる制度があったり、大企業を辞めて起業してもまた元の会社に戻れるといった制度が後押ししている状況もあるでしょうし、良くも悪くも、ドイツのようなエンジニアの雇用の受け皿となるような、強い製造業が比較的少ない(エアバスや、ブジョー、ルノーといった大きな会社ももちろんあるのですが)、高等教育でのテクノロジー教育がしっかりしている、フランス政府がCESに集中してリソースを配分して支援している(と個人的には思っている)、といった幾つかの要因があるのではないかと思います。
そして追加でこういった理由があるのではないかと考えているのは、
- アメリカのエンジニアやリソースに対するコストが高くなりすぎてハードウェアスタートアップが成立しづらくなっており、欧州の競争力が相対的に高くなった
- 昔は英語がフランスでは通じなかったが、現在スタートアップシーンではフランスでも当たり前に英語で会話できるようになった
- 英語がスタートアップシーンで通じるだけでなく、アメリカでシリコンバレー流の資金調達のあり方や事業の立ち上げ方といったノウハウが、フランスにも浸透し、シリコンバレーの美味しい仕組みがフランスでも活用されるようになり、このタイミングで華を開いた。
といったところです。
加えて、今後の成長市場であり、古いインフラや仕組みがないがゆえに、新しい製品やサービスがスクラッチから導入されやすいアフリカ市場の入り口にフランスはなっていますので(アフリカの約半数の国が旧フランス植民地だったので)、今後しばらくはフランスが盛り上がっていくんじゃないかな、と考えています(2024年のパリオリンピックくらいまでは)。
(ちなみにCerevoのLiveShellシリーズも、アフリカはもちろん、コソボのように内戦で放送インフラが破壊されたという国で良く売れています)
さて、こういったことから、しばらくはフランスが面白いと思っていますし、来年はさらにフランスに注力して活動していきたいと考えています。特に、各分野の大企業がどういった分野のスタートアップに興味を持っているかがわかる、Viva Technologyが、日本でも大きな動きとなり始めているオープン・イノベーションの流れがわかるイベントとして面白いのではないかと思います。
私も、昨年、今年と参加させていただきました。下記に、昨年参加した感想を稚拙ながらブログの記事にまとめています。
Fool on the Web: スタートアップが数千社集まったパリViva Technologyはスゴかった #Vivatech
http://www.hiroumi.org/2016/07/000viva-technology-vivatech.html
最後に、拙いですが、今年後半に立ち上げたばかりの会社で始めたクラウドファンディングを二つご紹介したいと思います。いろいろなハードウェアスタートアップが欧州で出展しているのをみて、勇気づけられてできたものでもあります。
ひとつめは、燕市のハッカソンがきっかけで誕生したプロジェクト。
sutto – A brandnew style of chopsticks and chopsticks stand by FutuRocket Co. — Kickstarter
https://www.kickstarter.com/projects/1583420628/sutto-a-brandnew-style-of-chopsticks-and-chopstick
もうひとつは、Yahoo! JAPANのHack Dayのハッカソン参加がきっかけで生まれたプロダクトです。
hackfon – Turn Your Analog Phone to a Smart Remote | Indiegogo
https://www.indiegogo.com/projects/hackfon-turn-your-analog-phone-to-a-smart-remote#/
特に2つ目のhackfonは、これを書いている現在、達成率96%とゴール間近となっていますので、ぜひご支援、応援いただければと思います。
このhackfonはアナログ電話をハックして、Amazon Dash ButtonやIoT電話として使えるようにするためのデバイスとして考えたものです。もともとは、照明に挿すタイプのLEDプロジェクターやLEDスピーカーなど、既存の仕組みをうまく活用する製品が面白いと考えていたのですが、同様に、最近あまり活用されていないモジュラーをもっと活用できる方法があるのではないだろうか? ということから考えてみた製品です。
これはCerevoのHackeyという商品からも多くのヒントを頂いています。
Hackey – Webサービスをコントロールできるキースイッチ
https://hackey.cerevo.com/
こちらもいろいろと面白いことができるIoT製品となっています。Amazonでも絶賛販売中ですので、冬休みにスマートスピーカーとあわせて遊んでみると、ちょっとした面白いことができるのではないかと思いますのでぜひお試しください。
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