はじめまして。Cerevoの鈴木です。
私も稲垣と同じく組み込みソフトウェアの担当なのですが、より低レイヤの方が守備範囲となっています。
最近デザインの参考に色々なガジェットを集めているのですが、先日ある方から「壊れているchumbyならあるけど」という連絡があり、頂けることになりました。
折角なのでchumbyの内部を勉強しつつ、いじくり回して復活させるまでの体験記みたいなものを今後紹介していこうと思います。
初見
このブログをご覧になっている方達に「chumbyとは…」という話は不要でしょう。
最近はビックカメラやソフマップでも入手できるようになりました。
ところで、頂いたchumbyは外側のカバーが剥がされて、中の臓物がむき出しのちょっと可哀想な状態でした。
さてさて、どこから手をつけましょうか…
まずは電源投入
見つめていても仕方ないので、何はともあれまずは電源を投入してみます。
フロントのLCDに何か表示されるかな、と思っていたのですが、何も映りません。。。
一瞬でも変化しないか、と数回電源のON/OFFをしてみましたが、何の変化もしません。。。
本当に電源が投入されているのか確認したくなってきました。
一度、電源電圧をテスタで測定してみたほうが良さそうです。
テスタでどこに当たればよいのか?それを知るためには回路図を入手する必要があります。
回路図を入手
Chumbyはほんの一部のソフトを除いて、ハードウェアを含めたほぼ全ての情報がオープンになっています。
回路図ももちろん入手可能です。
ただし、一度 http://www.chumby.com/developers にアクセスしてアカウントを登録する必要があります。
アカウント登録後は、Hardwareのページから “Complete schematics and layout for the chumby core unit with cross-references” のリンクを辿ることで Rev37_release.pdf がダウンロードできるはずです。
大元の電源電圧を確認してみる
電源回路は4ページ目になります。
(大きな画像で見る)
今回はバッテリを使わずACアダプタで動かします。ACアダプタ出力電圧はACアダプタを良く見ると書いてあって +12V です。
回路図を見てみると、内部ではこの+12Vから+5V, +3.3V, +1.8Vが生成されているようです。
信号名 DCIN_PROTECTED は元々 RAW_PWR の入力に対してフィルタやヒューズ、逆流防止用のダイオードを経由して生成されていて、(ほぼ)ACアダプタ出力なので、R300の片側が測定ポイントに出来そうです。
測定がしにくいので、測定に関係のないLCDは外すことにします。
外す前の状態は↓のような感じです。
LCDがメインボードと薄い銅板のようなモノでハンダ付けされているので、これを外さないといけません。
外した後の状態は↓のような感じになります。あとはLCDから伸びているフレキシブル基盤を外すことで、メインボードがむき出しにできます。
メインボードのプリント基板外周の金色のパターンはGNDなので、まずはR300の片側とGND間の電圧を測定してみます。
測定結果は…何だか良く分かりません。+12Vではなく値がフラフラして安定していません。
どうも、どこかで電源関係がおかしくなっているようです。
電源とGNDの抵抗値を測定してみる
こんなときは電源とGNDがどこかでショートしていることを疑ったほうがいいです。
ちょっとしたコツとしては、末端の方から調べてみるということでしょうか。
回路図を見ると、chumbyの場合はACアダプタ入力(+12V)→+5V→+3.3V, +1.8Vという系統になっていることが分かります。
そのため、一度chumbyの電源をOFF(意外と忘れやすい)にしてから、まずは+3.3V, +1.8VとGND間の抵抗値を確認してみます。
+3.3VはJ302で確認できるので、GND間との抵抗値を測定します。
測定結果は…801Ω、大丈夫そうです。
次に+1.8VはJ304で確認できますので、同じ調子で測定してみます。
測定結果は…3Ω、これはちょっと低すぎです。
モノにもよりますが、通常電源ラインとGND間の抵抗値は数100Ω~数kΩ程度の値になります。3Ωはあまりにも低い値です。
抵抗値が低いということは+1.8Vには多くの電流が流れるということを意味しています。
ここで先程説明した系統を思い出してほしいのですが、+1.8Vに多くの電流が流れるということは、遡るように+5Vにも多くの電流が流れて、最終的に+12Vにも多くの電流が流れることになります。
電源ICには流すことが出来る電流が仕様で決まっていて、それ以上になると電圧が下がります。
もしかして+1.8Vの過負荷が原因で、+12Vの電圧が不安定になっているのでしょうか…
負荷を減らしてみる
+1.8Vがおかしいのは何となくわかりましたが、何が原因なのかは良く分かりません。
こういうときは負荷となっているモノをばっさりと切り離してしまうとはっきりします。
+1.8Vが回路に供給されないようにすればいい訳です。
今回の場合は、+1.8Vを生成する電源ICを外してみるのが手っ取り早い感じです。
そこで+1.8Vを生成しているIC、U302を外します。
この程度の大きさのICであれば、ハンダゴテ2本を使うと以外と簡単に外せます。
U302を外したあと、+1.8V~GND間の抵抗値を測定してみます。
測定結果は…2.6kΩなので、負荷側には問題なさそうです。どうやらこのU302が壊れているようです。
ここまできたので改めて電源を投入してみます。+12Vの値が正常になりました!
次回の予告
さて+12Vはマトモになりましたが、じゃあ次の系統の+5Vはというと…まだフラフラして安定していません。
そして回路図を見てみると、+5Vを生成している電源チップに CHUMBY_ON という制御信号が接続されています。あやしいです。
(大きな画像で見る)
この辺りを少し追いかけてみようと思います。
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One thought on “電源が入らなくなったchumbyを復活させてみる ~その1~”
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楽しそうです~。想像出来ました^^;
その2が待ち遠しいです。