こんにちは。microcoppepanです。
早速ですが先日、ガラスのコップを割ってしまいとても悲しい思いをしました。
何が原因だったか忘れてしまいましたがイライラとしながらお皿を洗ってしまったのがいけなかったのでしょう。
イライラする > お皿洗う > 割る。心持ちが動作に影響するということでしょうか、このサイクルよくあります。
みなさんもお気をつけください。
で、そんな割ってしまったモノに限って大体がお気に入りだったりするわけです。
日常使いのお気に入りとなると喪失感は大きいもので、同じものをもう一度手に入れたくなります。
私も例に漏れず同じものを通販でポチッとしたわけですが、お気に入りのはずのそのコップを手にしてみると
何だかしっくりきませんでした。何かが。
ちなみに私は普段主にデザインを仕事としていますので
今回はこのコップを題材にデザインについてふわっと書いてみたいと思います。
先ほど新しく手に入れたコップですが、たしかに同じメーカー、同じ製品、違いがあるようには見えませんでした。
こちらがそのコップ。Creative Tops社のRANDWYCKというラインのうちの一つです。
[blogcard url=”https://www.creative-tops.com/brands/collections/randwyck/randwyck_scandia_300ml_glass.htm”]
形状としては円柱型の胴に半円から伸びたような簡素な取っ手がついています。取っ手付きビーカーのような面持ちです。
とってもシンプル。それだけに感じた違和感の正体が気になります。どこに違いを感じているのか。
そこで幸か不幸かヒビが入っただけで原型をとどめていた旧品と新しく手にしたものを比較してみました。
こちらがその画像。
細かく見ていくと以下の4つの違いがあることがわかりました。
- ロゴ
- 色
- 腰の曲線
- 取っ手
順番に見ていきたいと思います。
■ロゴ
これは分かりやすい。一目瞭然とはこのことです。底面に白いロゴがあるのが旧、ないのが新です。
で、これがデザイン的にどういった影響があるかを考えます。
このシンプルな形状においてロゴの有無はとても印象に与える影響が大きいと思います。
旧の方は白いロゴタイプによって全体が引き締まって見える、言い換えれば製品らしく見えます。
新の方はロゴがないわけですがロゴがない事がミニマルな構成をより際立たせているようにも見えます。
デザイン的にはどちらも一長一短ありそうです。社内でどっちがいいかと判断を仰がれたら正直困るやつです。
まあ実際にはただのコストダウンかもですが。
■色
コップを上から見ると違いがよくわかります。
本来は古い方が使い込まれているため若干色素が沈着するはずですが比べてみると新しい方が縁の色が青っぽくなっています。
これはおそらく原材料に混ざる不純物による影響と思われます。
工業製品とはいえ元は鉱石ですのでコントロールが難しいのでしょう。致し方なしです。
で、これがデザイン的にどういった影響があるかを考えます。
色味が違うというのはどういうことかと言うと透過率が違うわけです。
ガラス製品のような透明なものにおいて透過率が変わるというのは見えるものが変わるということで
もっと言えば見た目の重さが変わると言えると思います。
新しい方のコップは若干の青みが入ったことにより存在感が強まっているようです。
■腰の曲線
写真ではわかりにくいと思いますが比べてみるとわずかに腰のラインが違っているように見えます。
どういう製造工程なのかわからないので何とも言えませんが作り方によっては僅かな違いは出てしまうのでしょう。
もしかすると実際は同じ曲線なんだけど前出の色の影響で違って見えるのかもしれません。
で、これがデザイン的に(ry
もちろんコップ自体の形状が違うとなればそれは見た目に影響するよね、という話なのですが
この微妙な違いでも大きく変わってしまうものがあります。光の反射です。
同じように光を当てて撮った画像です。新しい方はテーブルと接してる部分に円弧状のハイライトが強く入っているのがわかります。
実はこのハイライトというのはプロダクトデザインをする上で重要とされる要素のひとつだったりします。
モノの多くは面で構成されているわけですが面を作るというのは変化具合を決めるということです。
その際に変化具合を確認するのに反射する光の変化を見るという手法をとります。
となると微分の微分を見るというような私にはよくわからない事になるわけですが
とにかく反射具合を見て形を決めていったりするのです。
コップの反射に戻りますが、ガラスのような透明材質だと形状だけでなく材質等の些細な違いで反射具合が変わってしまうとはいえ
上記の点でこれほどまでにハイライトが違う形状はデザイン的にはもはや別物と言ってもいいかと思います。
■取っ手
個人的にはこれが一番大きな違いを生んでるように思いました。
お分りいただけるでしょうか。
そうです。取っ手の水平部分が新しいものは短くカーブの始まりが早いように見えます。
それと径もやや太くなっているのです。
で、これが(ry
”円柱型の胴に半円から伸びたような取っ手”という構成は水平と垂直、そこに角Rの組み合わせです。
そのシンプルな各部の組み合わせが全体としての潔さを作り出してると思います。シュッ!シュッ!シュッ!という感じ。
ですが新しい方の取っ手は胴からの出だしで躓いてしまっているかのようです。
本来「シュッ!シュッ!シュッ!」のはずがこの傾きのせいで「シュッ!シュッ!ダルンッ」となっています。
何だかだらしのない印象とでも言いましょうか潔くありません。
また径が太くなっている点ですが、これは使用する際の印象に大きく影響します。
人の手は想像以上に繊細な感覚を持っているわけですが
今回の場合も旧コップでは華奢な取っ手の持ち感だったのが
僅かに太くなったおかげで剛健さを感じるまでになったのです。
■まとめ
以上から特に今回のコップのようなミニマルな構成のデザインにおいては
微妙な違いが大きく印象を左右してしまうことがある、という事がよくわかりました。
しかしながら元々人の感覚は変化や違いを敏感に感じ取ると言われていますので
今回のように比較検証しなければ気が付かないような部分だったかもしれません。
以上、駄文で恐縮ですがデザイナーの考えてることの一端でも見てもらえていれば幸いです。